ショートストーリー 「この物語はフィクションです」
受験シーズンの真っ只中、高校を卒業したばかりの若者、享一郎は、悩みを抱えていた。彼の最大の課題は、どうしても朝早く起きることができないことだった。彼の朝はいつも遅く、学校に遅刻しがちで、親からは「遊んでばかりいる」と言われ続け、彼の自尊心は日々傷ついていた。
ある冬の夜、彼は抱えていた苦悩を打破するため、深夜まで細かい計画を練っていた。彼はその名を「早起きプロジェクト」と名付け、様々な工夫を凝らした目覚ましをセットし、睡眠環境を整えることにした。
次の朝、享一郎は心配通りに目覚ましに気づかず、またもや遅刻してしまう。しかし、彼は諦めなかった。再び計画を見直し、今度は睡眠導入剤を使うことにした。しかしこれもうまくいかず、彼は何度試しても目覚ましの音を聞き逃してしまう。
そんなある日、彼の母が彼に提案した。それは受験前に朝型人間になるために、夜更かしをやめて早寝早起きにトライするというものだった。母はさらに、朝の光には目覚めを促す効果があるため、日の出とともに起きることを勧めた。
翌朝、享一郎は母のアドバイスに従って6時に起きることに成功する。しかし、彼は起床後の活動計画がなく、結局はベッドに戻ってしまった。この失敗をキッカケに、享一郎は以前よりもがっかりしてしまう。
彼の心が暗闇に沈んでいる時、祖母が姿を現した。祖母は受験でひどく緊張している享一郎に、気分転換のために一緒に庭園を散歩しようと誘った。祖母はさりげなく、高校時代に弟が早起きで勉強するコツをどうしたのか、という話をもちかけた。
祖母によると、弟は毎朝、好きなアニメの主題歌を目覚ましに設定し、起床の楽しみとしていたという。また、早起きは苦手でも、その楽曲を聞くと自然と目が覚め、一日が快適に始まるという。
享一郎はその話に心を動かされ、翌日から自分の好きな音楽を目覚ましとしてセットすることにした。すると、初めての朝、彼は予定通りに起床し、新しい一日の出発を楽しむことができた。学校に遅れることもなく、むしろ余裕をもって登校ができたのだ。
しかし、彼の苦難はここで終わりではなかった。実は、少し早起きができるようになっても、親の期待するような成果はすぐには出なかった。彼は勉強に集中できず、時間を無駄にしてしまいがちだった。しかし、彼は諦めず、自分なりの勉強法を見つける決心を固めた。
ある日、彼はふと思いついた。朝起きて最初の時間を、勉強ではなく自分の好きなことに使うことにしようと。それは少しの瞑想と軽い運動だった。これが功を奏し、彼の精神状態は改善し始めた。そして、享一郎は勉強に取り組む時間を増やすことができた。
ついに受験の日がやってきた。享一郎は数か月間の努力が報われると信じて、受験会場へと向かった。そして試験結果は彼を驚かせた。彼は自分が受け入れられるとは思ってもみなかった大学から合格通知を受け取ったのだ。
享一郎は、自分の弱点を克服することで、何よりも大きな自信を手に入れた。彼は人生で最も困難な試練の一つを乗り越え、その経験は彼を成長させた。そして、朝が苦手な受験生から、大学生として新しい章を歩み始める準備ができているのだった。