ショートストーリー 「この物語はフィクションです」
冬の息が白く霞む高原町、雪深い山脈を望む小さなカフェに、スノーボードを愛する者たちの群れが集う。そこでは、雪の上を滑走する疾速の快感を共有するため、未知の経験を積み重ねるための話が始まる。
町の外れに立つ古びたアトリエには、雪板製作に没頭する青年、慎がいた。彼はただのスノーボード製作者ではない。スノーボードの魂を呼び覚まし、その魅力を世に広めようと情熱を燃やす革新者である。慎の夢は、スノーボードが自然との調和を築き、それを通して人々の心を解き放つこと。人々が語り継ぐ伝説、バートン製品に憧れ、それに惹かれる他のスノーボーダーたちの絆を深めることであった。
彼のスノーボードはただの板ではない。それは精密な計算の下、独自のフォルムと機能美を持ち合わせ、いわばダンスフロアの伴侶のような存在。彼が最も尊敬するのはスノーボード業界のパイオニア、ジェイク・バートンだ。彼はジェイクの生きざま、オリジナルスノーボードに生命を吹き込んだ創造力に自らを重ね、その精神を受け継ぐことに心血を注いでいた。
慎にとってスノーボードは単なる冬のスポーツではなく、ライフスタイルそのものだった。雪山を駆け上がり、山頂から一気に滑り降りるあの感覚。それは彼にとって、日常を離れて自由になる唯一無二の手段だ。
そんなある日、彼のアトリエに、若く意欲的な女性スノーボーダー、冬美が現れる。彼女は新しいスノーボードを求め、町全体から話題の中心となっていた慎のもとを訪れたのだ。
冬美は、遠く離れた北の地から来ており、多くの言伝を聞きつけていた。彼女は、自分に合ったパーフェクトなボードを求めていたが、それは単なる性能の追求ではなかった。冬美が求めていたのは、自分自身を表現できる一枚が必要だったのだ。
冬美にとって慎が手掛けるスノーボードは特別であり、ジェイク・バートンの精神を受け継ぐそのボードに心惹かれた。彼女は慎にとって重要な存在となり、二人はともにスノーボードの真髄を追求し始める。
スノーボードに描かれた独創的なアートワーク、冬の山を精巧にカービングする板の裏側に隠された技術革新。彼らは、スノーボード一つ一つに物語を宿し、雪上を滑るたびに新たな伝説を創造していく。
しかし、彼らの旅路は決して平坦ではなかった。スノーボードの大会で起こる予期せぬ出来事、技術の頂点を極めたライバルの出現、そして、スノーボードの進化に対する彼らの挑戦。一体全体、慎の作る新シリーズのボードは世間の注目を集めることができるのか。そして冬美は彼のボードと共に雪山の女王に君臨することが出来るのか。
夜が明け、雪山が朝日に輝く。息を呑むようなクリアブルーの空の下、今まだ誰も足を踏み入れていない新雪が慎たちを待っている。ここから新たな物語が生まれる。彼らが求めるのは単に勝利ではない。それはスノーボードを通じた永遠の歓びであり、バートンに憧れるすべての者たちへの、終わりのない夢中の旅路なのだ。