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消費期限を過ぎても:ミヤコが見つけたカイロの価値

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ショートストーリー 「この物語はフィクションです」

冬のある日、忘れ去られた町の片隅で、古びた倉庫が佇んでいた。壁には時間の経過を物語る古い広告ポスターがいくつか貼られ、風に吹かれて端が少しずつ剥がれていた。倉庫の中は薄暗く、厚いほこりが空気を覆っている。そこには忘れられた物品群が積み上げられ、その中には数年間放置されたカイロの箱もあった。

箱の一つが軽く揺れ、中からミヤコという小さなカイロが飛び出した。彼女は自分がいまだに温もりを提供できることを信じていたが、同時に消費期限が過ぎてしまった現実も理解していた。だが諦めきれず、再び役立つことを願い、倉庫を抜け出す冒険に出る決意を固めた。

ミヤコはまず、倉庫の主である老人、ヤマダさんに巡り合った。彼は昔カイロの商いで生計を立てており、カイロへの愛情も深かったが、時代の変化とともに顧客を失っていった。ミヤコは彼に自分の想いを語り、最後の一度だけ、人の役に立ちたいと願った。

ヤマダさんは感心し、老眼鏡をかけながらミヤコをじっと見つめた後、思い出話を始めた。彼はかつて冬の厳しい日に小さい子供たちや寒さに震える老人たちを温めていたカイロの思い出を語り、ミヤコもそんな暖かい記憶の一部になりたいと強く感じた。

次にミヤコは、近所で開かれていた小さな冬祭りに向かった。雪で白く染まった広場には子供たちが歓声をあげながら遊んでいたが、その中には手袋を忘れてしまった少年がおり、手をこすり合わせて震えていた。ミヤコはその少年のもとへ滑り込み、彼の凍える手を優しく包んだ。期限切れだったが、まだちゃんと温かさを放っている。

少年は驚きとともにミヤコの温もりに感激し、「ありがとう、助かったよ」と言いながら笑顔を見せた。その微笑みを見るためだけに、ミヤコは今までずっと待っていたのだと心の底から感じた。

祭りが終わると、多くの人々がミヤコのことを話し始めた。消費期限が過ぎたカイロであるにも関わらず、役立ったのだと。そして驚くべきことに、彼女に感動した祭りの人々が持ち寄った暖かさによってミヤコは本来の機能を取り戻し、再び人々を温めることができるカイロとなった。

この冬の奇跡は人々の間で語り草となり、時の流れとともに伝説とされるようになる。ヤマダさんの倉庫の中にしまわれていたミヤコは、期限を過ぎても温かさを失わない、永遠のカイロとして今も語り継がれている。

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