ショートストーリー 「この物語はフィクションです」
かつて降り注ぐ雪の中で、一台の車が山の麓をゆっくりと登っていた。彼の名前は大輔。元スキーレーサーで、怪我がきっかけでスノーボードに魅了されたアスリートだ。今季は彼にとって転機のシーズンである。同乗者は古くからの友人であり、新たな挑戦を共に切磋琢磨する仲間、ケンジ。彼はこのスポーツにおいて、いつも大輔のサポート役を務めてきた。
二人が目指すは山頂にあるゲレンデ、そこは中級者が上級へと進むための聖地だった。大輔は昨季、中級から一歩踏み出すために必死に努力を重ねていた。彼は日々のトレーニングと精神的な成長を通して、スノーボードに関するビジョンを磨き上げていたのだ。
最初の試練は”ダイナミックターン”のマスタリングだった。スピーディで流麗な曲線を描き、高速で斜面を駆け下りる。これこそが、一人前のスノーボーダーへの第一歩とされるスキルだ。だが、これまで何度挑戦しても、大輔はいつも加速に身を任せた挙句、コントロールを失い転倒していた。
しかし彼は決して諦めなかった。山々と対峙し、無数の試みの中で自らの限界を押し広げ、ついには風にも負けない強靭な技術を手に入れた。ケンジはいつも彼を見守り、微微たる進化の瞬間を目撃していた。
二つ目のハードルは”フリーライディング”だ。このスポーツで真の自由を味わうためには、規制されたゲレンデを飛び出し、自らのラインを山に描く必要がある。それは危険と隣り合わせの世界だが、真のスノーボーダーたるもの、この挑戦から目を背けることはできない。
彼らは力を合わせ、山の頂に立ち、見渡す限りの銀世界を下に見た。そして、下り始める。パウダースノーが顔面に激しく打ち付ける。それでも大輔は止まらない。ケンジの声援を受け、次第に自分だけの道を見い出し、一つのラインに命を吹き込んだ。
そして迎えたクライマックス、”ビッグジャンプ”への挑戦。山の形を利用した天然のジャンプ台から飛び立ち、空中で一瞬の静寂を得る。重力に逆らいながら、大輔は雄大なる飛翔を楽しむことを学んだ。
季節が終わりに近づく頃、進化した大輔は、かつての彼とは全くの別人のように、山を駆け下りた。ケンジはその姿を誇らしく見つめる。二人の旅は決して終わることはなく、次なる冒険へと連なっていく。
中級者の頃、大輔は上達の限りない可能性を信じていた。そして実際にそれを体現してみせたのだ。彼は新たな領域に踏み入り、スノーボードの醍醐味を知るに至った。その旅路は終わりがない、永遠の連続だった。
